( ↑ 中島勇一著 『こころの力が広がるとき』のイントロダクションと同じ内容になります)
ヒプノセラピーをやっている人や、受けに来る人は、ヒプノ、つまり催眠をすると心が変わっていくと思っていますが、そうではありません。
ヒプノ(催眠)自体は、セラピーではないのです。
催眠状態という、変性意識状態を作り出すだけです。
この変性意識状態の中で何をしていくかによって、いろんな結果が出てきます。
例えば洗脳するときも、瞑想させたりある薬を飲ませたりして、変性意識状態にした上で、いろんな考えや思想を吹き込んでいったりします。
ステージ催眠では、催眠状態で面白おかしいことをやらせたりします。
本屋には、「催眠を使って人の心を自由自在に操る」とか、「催眠を使って女性をくどく」といった本も並んでいます。
ですから、催眠イコール心が癒される、ということではないのです。
ただ単に催眠をかけるのではなく、催眠状態の中で心理療法をやっていくからこそ、「催眠療法」と言えるのです。
18~19世紀にかけて、人を催眠状態にすると、その人の無意識にあるもの、抑圧している感情や、押さえ込んでいる別の自分(気づいている部分以外の自分)が出てくるという報告が、多数ありました。
別の自分といっても、多重人格のように、意識で全く認識できない自分が存在するわけではありません。
例えば、「結婚したい」と切望している部分があるのに、意識の深い部分では、「結婚なんかしたら、自分の母親みたいになってしまう。おしまいだ」と思っている部分がある、というような状態です。
心理的な問題が原因でヒステリー症状が起きるクライエントを癒していく際に、催眠状態の中で徐反応(感情の解放)が起きた結果、ヒステリー症状が治るケースは、多数報告されています。
フロイトは、この過程で、自分自身で気付いている意識以外に、催眠状態の中で出てくる「無意識(潜在意識)」が存在することを発見していったのです。
もっとも、フロイト自身、催眠が得意ではなかったため、催眠を使わない“自由連想法”という方法で、精神分析を発達させていきました。
精神分析は、心理療法の先駆けです。
このように、「催眠」は初め抑圧の解放から始まり、そこから心理療法の基礎となるものが発展していきました。
それが逆に今は、心理療法のエッセンスを催眠状態の中で取り入れていって、使っていく、つまり催眠状態の中で心理療法を行なっていくというコンセプトに変わってきています。
私自身、催眠を学ぶ前、いろんな心理療法を夢中になって体験しているときには、「催眠」なんて、うさんくさい、マユツバものだと思っていました。
心理療法に長く携わっていると、暗示を入れたくらいで人間の心が変わるわけがないということを、よく知っていたからです。
普通の、催眠ではない意識状態で心理療法をやっても、効果はあります。
例えば、カウンセリングやゲシュタルト療法的なやり方、椅子を使ったワーク、心理劇のようなワーク等を普通の意識状態でやっていても、突然涙ぐんだり、「そうだったんですね」と気付いたような感じになるときがあります。
こういった「この人のこころが変わりつつあるな」「深いところから許しが起きているな」という瞬間には、独特のこころが震えるような雰囲気があります。
催眠を学ぶまでは、単に感情が込み上げてきたんだな、気付いたんだな、という程度にしか思いませんでしたが、「催眠」という眼差し、角度、側面から見ることができるようになってみると、心理療法で人が変わる瞬間というのは、変性意識状態になっている、つまり催眠状態になっているんだ、ということが分かったのです。
クライエントが抱えている問題に共通していることは、「私はこうしたい」という気持ちがありながら、同時にそうできない部分を持ち合わせているという葛藤があることです。
普段は、エゴ(自我)がコントロールしている状態ですが、潜在意識の中には、いろんな気持ちがあって、意識と潜在意識の間で葛藤が起こることがあります。
今まである気持ち、感情、考え方にこだわっていたものが、心理療法を受けているうちに、違う考え方、感じ方に変わっていく瞬間、そこでは変性意識状態になっているからこそ、普段の浅い意識状態のところでこだわってしまっているものが、もっと深い意識のところにあるものに繋がっていって、そこにあるいろんな考えや気持ちや感情などとのコミュニケーションが始まっていくのです。
変化は、そこで起きるのです。
つまり、初めから催眠を使ってトランス状態に入れることができれば、潜在意識の部分とコンタクトを取りやすくなるのです。
催眠は、セラピーを行う上で、とても効果的な道具なのです。
「意識が気付いていない部分には、どんな気持ちがあるのか?」という視点を持ちながら、対立する2つの気持ちに仲良くなってもらうことが、心理療法の目的です。
あたかも会社の会議のように、2つの気持ちの間で、妥協案や代替案を見つけ出していくのです。
実は、脳に器質的障害がある人を別にすれば、催眠に入らない人は、いません。
やり方がマッチしているかどうかの問題なので、その方法を見つけてあげればいいのです。
例えば小さい子と話すときに、その子の目線や口調に合わせていると、その子供は自分と近いんだ、という感じを受け取ってくれて、安心してきます。
同様に、相手のペースに自分のペースを合わせていくだけで、催眠に入っていくことすらあるのです。
そして暗示を使ってコントロールしていっても、浅いレベルの操作しかできないため、生々しい感覚や感情、イメージと気持ちが一緒になった記憶が強いと、暗示にかからないことが多々あります。
「こうなるべき」「こうなって欲しい」という押しつけのゴールに誘い込むのではなく、このイメージと感情が一緒になった気持ちを、穏やかな気持ちにしていくことをやってあげることで、その人が緩んでいき、ひとりでに、今までと違う、ある感じ方を持つようになっていくためのお手伝いをしていくのです。
分析やアドバイスをすることは、人によっては、苦しくなってしまう人もいます。
分かっていてもできないところに、こころの葛藤があるからです。
こころの中で交流が起きてくることで、ある感じ方になっていって、それがある考え方になっていくような事が起こります。
例えば、今まで親と一緒にいるのが苦痛で仕方なかった人が、セラピーの中で、「大丈夫になる」と決めるのではなく、いつの間にか一緒にいても大丈夫になっていることに気付くと、それが「大丈夫かも知れない」という考えに変わっていくようなことが 起こります。
これは、考えにまで発展しなくても、ただある感じ方になっていくだけでも構いません。
普段は、“考え”というよりも、“気分”と“雰囲気”で行動しているからです。
ある気分になってしまうから、「イヤだ」という感情が出てくるのです。
その気分は潜在意識で感じていて、言葉にならないものです。
潜在意識は、気分でできています。
だから、言葉ではなく、気分を伝えあうだけでも、交流が起きてくるのです。
そしてセラピスト自身も、自分の力でやっている感覚ではないので、つぶれにくいのです。
謙虚に、自分の考えをなるだけ押し付けずにセラピーをしていくのに力が要らないわけではありませんが、傲慢になってしまうと、「自分がやったんだ」というところを見せないといけないので、全てを背負っていく羽目になります。
クライアントに、「こういうことが正しいんです」「このやり方でどうしてやらないんですか」という圧力をかけると、必ず相手の心にひずみや、拒絶反応が起きます。
ですから、元々相手の中にあるものを使っていくやり方が、一番効果的です。
こういったやり方は、特に催眠を使っていくと、非常にやりやすくなります。
例えばその人が普通の意識状態のときは、「私は、これだけの人間でしかありません」と思っているとしても、催眠状態では、もっと深い意識とも繋がっていくので、その人の中にある本人でも気付かなかったいろいろな資源、リソースが、出てきやすくなります。
その人が変わっていくのは、その人の内側にある力でしか変わっていきません。
「私が癒していく」というのではなく、クライアント自身が内側に持っている心の力で癒しが進んでいく、その人自らが自分を癒していくお手伝いをしていく、という感覚で進めていくのです。
このように、催眠を有効なツールとして、効果的なセラピーをしていく。
それが、催眠療法、ヒプノセラピーのあり方なのです。
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グループセッション「H・E・A・R・T」では、日本人初の全米催眠療法協会認定講師であり、現役のヒプノセラピースクールの専任講師として1200名以上の生徒を指導した中島勇一が、ファシリテーターを務めています。
ヒプノセラピーだけでなく、20年以上心理療法に携わってきた実績と経験から、より効果的なこころの変化と癒やしが起きるワークを行います。
詳しくは、H・E・A・R・T の概要をご覧ください。